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結婚式コラム

初めてのロンドン、初めてのサヴィル・ロウ(1/5)

ロンドンのテーラーを訪ねた話を、全5回で書きます。今回はその1回目です。

2024年5月、ロンドンにいました。新郎衣装をお願いしている提携先、BELGRAVIA&SONS の松山竜太さんが視察に行くと聞いて、「付いて行っていいですか」と手を挙げたからです。

英語はほとんど話せません。ロンドンも、サヴィル・ロウも初めてでした。

「付いて行っていいですか」と手を挙げた

なぜ行きたかったのか。理由はひとつだけです。

新郎の衣装をご案内するとき、私は「いい生地ですよ」と言います。仕立てが違います、とも言います。

でもその生地がどこで、どういう人たちの手で選ばれているのかを、自分の目で見たことがありませんでした。

見ないまま言葉にしているのが、どうにも気持ち悪かったんです。

松山さんが色々と手配をしてくださって、行けることになりました。

まず、建物が大きい

まず思ったのは、建物の大きさです。天井も、棚も、置いてある生地の量も、日本では見たことのない大きさでした。そして地下室がある!これはロンドンならではの特徴ですね。

あとから知ったのですが、その一軒目は、そう簡単には中に入れてもらえない店でした。何度もロンドンに通っている松山さんですら、これまで入れなかったそうです。

(この話は、次回くわしく書きます)

電線が、一本もない

街そのものが、映画のようでした。

歩いていて途中で気づいたのですが、景観のために電線が一本も出ていません。空を見上げても、線が横切らない。それに気づいてから、街並みの見え方が変わりました。

きれいというより、そこまでやるのか、という感じです。

伝統を守るというのは、こういう地味なことの積み重ねなんだと思いました。この日回ったテーラーで見たものも、結局は同じことでした。

サヴィル・ロウという通り

サヴィル・ロウは、長さ200メートルほどの、短い一本の通りです。

オーダースーツのことを「ビスポーク」と言いますが、あの言葉はこの通りで生まれました。「be spoken(話し合って決められた)」が語源だと言われています。お客さんと仕立て屋が話しながら一着を決めていく、そのやり方そのものが名前になった通りです。

その200メートルに、200年以上続く店が並んでいます。

映画の店の前で

通りを歩いていると、Huntsmanという店の前に出ました。

映画『Kingsman』に出てくるテーラーのモデルになった店です。ご存じの方も多いと思います。

今回、中には入っていません。 前を通って、写真を撮っただけです。

でもこの日、他の4軒には入れてもらえました。それがどれくらい運のいいことだったのかは、あとから分かることになります。

案内してくれた人

現地を案内してくれたのは、生地商 HARRISONS のセールスマネージャー、ジェイミー・ダンスフォードさんです。

会話は、松山さんが通訳してくれました。あとは自分の知っている単語と、身振り手振りです。ほとんどの話は、その場では分かっていませんでした。

ただ、案内してくれたのが「生地を売る人」だったおかげで、生地を見てから、それを仕立てる場所を見るという順番で回ることができました。偶然ですが、この順番だったから分かったことがいくつもあります。

この日回った4軒

次回から、1軒ずつ書いていきます。

Anderson & Sheppard

柔らかい仕立てで知られる店。チャールズ国王の服も仕立てています。

Henry Poole & Co.

1806年創業、サヴィル・ロウで最も古いテーラー。タキシードが生まれた店です。

JP Hackett

サヴィル・ロウ14番地。他の3軒とは、店の空気がまったく違いました。

Gieves & Hawkes

サヴィル・ロウ1番地。軍服と王室の仕立てを担ってきた店です。

おわりに

この4軒で見たことは、そのまま「新郎の衣装をどう選べばいいか」という話につながっていきます。

専門的な難しい話は大好きですが、私は仕立て屋の人間ではないし、英語も得意ではありません。実際に現地で生地に触れて、店ごとの違いを自分の目で見てきました。ネットで調べただけの知識よりは、実感を持ってお話しできると思います。

次回は1軒目、Anderson & Sheppard の話です。松山さんが何年も入りたがっていた部屋に、初めてのロンドンでいきなり入ってしまった日のことを書きます。

→ 次回:一生に一度しか入れないテーラー(Anderson & Sheppard)